科学知識:ダイカスト(Die casting)とは?メリット・デメリットについて
他のセクションで、鋳造(Casting)と成形シミュレーション(Molding simulation)について、軽く説明しました。既にご覧になられた方は、鋳造について、大まかな理解ができたと思います。
まだご覧になっていない方は、下のリンク先から確認できます。
これから、鋳造の中でも非消耗型鋳造(Non-expendable mold casting)に分類される「ダイカスト(Die casting)」について、詳しく説明していきます。ここで、ダイカストについて理解を深めていただけたら幸いです。
ダイカスト(Die casting)とは?
ダイカスト(Die casting)とは、溶融した金属を精密な金型に高圧(High Pressure)で注入する鋳造技術で、高品質な完成品を短期間で大量に生産することができます。ダイカストで生産された製品はダイキャストとも呼ばれています。「ダイ(Die)」は金型のことで、「キャスト(Casting)」は鋳物を指します。
ダイカストの歴史は1838年アメリカの発明家デヴィッド・ブルース(David Bruce、1802-1892)が開発した手回し式活字鋳造機(Pivotal type caster, Bruce casting machine)まで遡ります。これはメソポタミア(紀元前3200年)の青銅器の鋳造と比べると年季はやや浅いものの、その技術が将来の工業技術・製品の普及の礎を築いたことは間違いありません。
他の鋳造技術と比較すると、ダイカストで生産した製品は優れた寸法精度、美麗で平滑な鋳肌(いはだ)、微細な金属構造、高い強度、大量生産向き、加工コストの削減などの特長があります。そのような特長から現代社会において、自動車、自動二輪車、家電製品、建築材料など様々な分野の部品や構造部品の製造に広く使われています。
ダイカストと他の鋳造技術との比較
既に他のセクションにて説明した通り、鋳造技術には様々な用途があります。代表的な鋳造技術には「砂型鋳造(Sand casting)、精密鋳造(Precision casting)、金型鋳造(Metal mold casting)、低圧ダイカスト(Low Pressure Die Casting)、ダイカスト(Die casting)」などがあります。各鋳造技術にはそれぞれのメリット・デメリットがあり、実際の製造現場においては生産する製品や利用する鋳造材料により、最適な鋳造法を選択します。
各鋳造技術の特長とメリット・デメリットについて、下の表にまとめております。
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砂型鋳造(Sand casting)
砂でできた鋳型に溶湯を流し込み、製品を成形させる方法です。鋳造する度に新しい鋳型を作る必要がありますが、鋳型の製作コストが安くて必要な設備も少ないため、ランニングコストはとても安います。また、鋳鉄(Cast iron)、鋳鋼(Cast steel)、アルミニウム合金、銅合金などの様々な鋳造材料を利用できます。代表的な鋳造方法は、生砂型鋳造(Green sand casting)、有機自硬性鋳造(Self-Hardening casting)などがあります。
(*引用自プロセスX頻道)
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精密鋳造(Precision casting)
ワックス(Wax)や樹脂(Resin)で作った模型に耐火物粉末やセラミックスなどでコーティングした鋳型か、もしくは石膏(Plaster)で作った鋳型に溶湯を流し込んで成形させる方法です。この技法は寸法精度に優れ、滑らかな製品外観を持つ複雑な構造製品を製造できるため、アクセサリーから飛行機用の機械部品の生産まで広く使われています。代表的な鋳造法は、ロストワックス鋳造(Lost-wax casting)、石膏鋳造(Plaster mold casting)などがあります。
(*引用自ArmstrongMold頻道)
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金型鋳造(Metal mold casting)
鋳鉄や耐熱鋼などでできた金型に、重力(Gravity)で溶湯を流し込んで成形させる方法で、重力鋳造(Gravity die casting)とも呼ばれます。利用できる鋳造材料は、アルミニウム合金、マグネシウム合金、銅合金などがあります。砂型鋳造と比べ、寸法精度が高く、表面がや滑らかで、機械的性質に優れているため、耐圧性や強度が必要な部品の生産に使われます。
(*引用自プロセスX頻道)
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低圧ダイカスト(LPDC, Low Pressure Die Casting)
金型鋳造と似ており、同じく金属でできた金型に溶湯を流し込んで成形させる方法です。ただ、重力で溶湯を金型に充填する金型鋳造と異なり、低圧ダイカストは密閉した保持炉に0.01~0.1Mpaの空気圧をかけ、溶湯を金型に充填します。溶湯が凝固した後に保持炉内の大気圧を開放し、未凝固の溶湯を保持炉へ戻します。
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ダイカスト(Die casting)
低圧ダイカストとは逆に、溶湯を約30~80 Mpaの高圧で精密な金型に充填して成形させる方法で、高圧ダイカスト(HPDC, High Pressure Die Casting)とも呼ばれます。その手法で生産する製品は、優れた寸法精度、綺麗で平滑な鋳肌、微細な金属組織、高い強度などの特徴があります。
(*引用自リョービ株式会社頻道)
ダイカストに用いられる材料
ダイカストに用いられる材料は、主に非鉄金属(Non-ferrous metal)であるアルミニウム合金(Aluminum alloy)、亜鉛合金(Zinc alloy)、マグネシウム合金(Magnesium alloy)、銅合金(Copper alloy)などがあります。
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アルミニウム合金(Aluminum alloy)
比重は約2.7 g/cm3で、優れた耐食性と軽量で、長期間でも寸法精度を維持できるなどの特性を持つため、各領域で積極的に用いられています。また、ダイカスト全体の約97.9%を占めており、自動車・自動二輪車のエンジンブロック(Cylinder block)、二輪車ブレードレバー(Brake kever)、ガス器具(Gas stove/furnace)などの多くの産業分野で使用されています。
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亜鉛合金(Zinc alloy)
比重は約6.6 g/cm3で、耐衝撃・優れた機械性質で、寸法精度が高く、メッキなどの表面処理がしやすいなどの特性を持つため、薄肉で複雑な構造部品の生産に向いています。ただ、比重が重いので、製品の軽量化には向きません。自動車ハンドル(Car door handles)、PCコネクター端子(PC connecter)、カーグリルカバー(Car radiator grill cover)などの製品に使われています。
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マグネシウム合金(Magnesium alloy)
比重は約1.8 g/cm3で、鉄(Fe)とアルミ(Al)の1/4で、実用的な小型金属の中で最も軽い材料です。耐くぼみ性と振動を吸収できる特性を持つ、スマートフォン、パソコンなどの電子製品の筐体に使われています。
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銅合金(Copper alloy)
比重は約8.9 g/cm3で、優れた電気・熱伝導性で、高い強度、耐食性などの特性を持つため、水栓金具、部屋ドアハンドル、蝶番などの建築材料に使われています。
*引用自日本ダイカスト協会「ダイカストって何? DIE CASTING」, (2022)
ダイカストマシンの構造
使用する鋳造技術によって異なりますが、ダイカストマシンの構造は、金型の開閉を制御する型締装置(Clamping unit)と、溶湯を金型に射出して充填する射出装置(Injection unit)と、溶湯が冷却して成形する鋳物を金型から押し出す押出装置(Ejector unit)に概ね分けられます。
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型締装置(Clamping unit)
可動ダイプレート(Movable template)と固定ダイプレート(Fixed template)の上に設置された金型(Mold)の開閉動作を制御する装置で、溶湯を充填する際に発生する型開力(Mold opening force)を金型に封じ込めるように型締力(Mold clamping force)を生成する役割もあります。
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射出装置(Injection unit)
スリーブに注ぎ込む溶湯を金型キャビティーに射出・充填動作を行う装置です。構造上では、射出スリーブ(Sleeve)、射出プランジャー(Injection plunger)、射出シリンダー(Injection cylinder)、アクチュエータ(Accumulator)などで構成されます。
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押出装置(Ejector unit)
金型内に充填された溶湯が冷却され、成形された後に可動型(Movable die)から鋳物を押し出す装置です。構造上では、押出ピン(Ejector pin)、押出板(Ejector plate)、押出シリンダー(Ejector cylinder)などで構成されます。
*引用自日本ダイカスト協会「ダイカストって何? DIE CASTING」, (2022), p14
ダイカストの関連技術
現代のダイカスト技術は、鋳造技術と同様にさまざまな原理や技術を核にして、異なる派生技術が開発されています。これらの関連技術は、大まかに「普通ダイカスト(General die casting)」と、派生技術である「特殊ダイカスト(Special die casting)」の2つに分けられます。
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普通ダイカスト(General die casting)
普通ダイカストでは、使用する射出機構により、「コールドチャンバーダイカスト(Cold chamber die casting)」と「ホットチャンバーダイカスト(Hot Chamber die casting)」に分けられます
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コールドチャンバーダイカスト(Cold chamber die casting)
ダイカストマシンの本体構造は溶解保持炉と分離して設置され、射出機構のチャンバー(Chamber)が空気にさらされるため、金属溶湯が冷却されます。また、この技術を使用する設備は「コールドチャンバーダイカストマシン(Cold chamber die casting machine)」と呼ばれています。射出プロセスでは、低速射出と高速射出の2段階で金型に溶湯を射出し、低速射出の速度は通常0.1〜0.7 m/sで、高速射出は2〜3 m/s程度です。最近では技術の進歩に伴い、高速射出が10 m/s程度の可能なマシンも開発されました。
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ホットチャンバーダイカスト(Hot Chamber die casting)
コールドチャンバーダイカストマシンの構造と異なり、射出機構と保持炉が分離せず、一体化的に設置されます。その最大の特徴は、射出機構のチャンバーが専用の保持炉の中に浸っており、生産する際に溶湯はグースネック(Goose-neck)を通じて金型に射出して成形させます。この技術を採用する設備は「ホットチャンバーダイカストマシン(Hot Chamber die casting machine)」と呼ばれ、射出動作を行う際の射出速度は約1〜2 m/sです。
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特殊ダイカスト(Special die casting)
特殊ダイカストは、一般的なダイカスト技術から発生した特殊技術で、ダイカスト技術でよくある欠陥(湯流れ不良(Misrun)、湯境 (Cold shut)、ひけ巣(Shrinkage cavity)など)を改善する技術です。
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高真空ダイカスト(Vacuum die casting)
真空ダイカストは、スリーブや金型キャビティー(Mold cavity)内の残留した空気やガスを強制的に排出しながら成形する方法です。空気やガスが強制的に排出されるため、溶湯の流動性が向上し、鋳物内部の気孔などの欠陥が低減できます。ただ、この技術は射出プロセス中に真空状態を維持するため、金型パーティング面(Parting surface)、押出ピン(Ejector pin)、スリーブ(Sleeve)、ブランジャーチップ(Plunger tip)などの部品にシールを追加して改造する必要があります。また、キャビティー内のガスを最小限に抑えるため、ガス発生が少ない離型剤(Mold lubricant)やプランジャーオイル(Plunger lubricants)を使用しなければいけません。
(*引用自リョービ株式会社頻道)
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低速充填ダイカスト(Low speed filling die casting)
低速充填ダイカストは、溶湯を金型キャビティーに乱流を発生させないように低速で充填する技術です。溶湯を金型にスムーズに充填し、金型キャビティーからガスが徐々に排出されるので、鋳物に空気の巻き込み(Air entrapment)が低減できます。また、溶湯の乱流を抑えるので、「層流ダイカスト(Laminar flow die casting)」とも呼ばれます。関連する技術では「スクイズダイカスト法(Squeeze casting process)」、「横型低速充填ダイカスト法((Horizontal Low-velocity die casting process)」、「NI法(New Injectioni die casing process)」などがあります。
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スクイズダイカスト法(Squeeze casting process)
一般的なダイカストであるコールドチャンバーダイカストマシンやホットチャンバーダイカストマシンとは異なり、スクイズダイカストマシンの射出機構は垂直方向に設計されています。鋳造製造中、スリーブと射出機構が傾斜し、溶湯をスリーブに給湯します。給湯完了後に射出機構が元の位置に戻り、スリーブが金型に接続し、溶湯を金型キャビティーに注入して成形されます。
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横型低速充填ダイカスト法(Horizontal Low-velocity die casting process)
横型低速充填ダイカスト法は、コールドチャンバーダイカストマシンから派生する技術の一つです。通常のコールドチャンバーダイカストと異なり、低速(0.03〜0.06 m/s)で金属溶湯を金型キャビティーに注入して成形させます。ただし、低速のためスリーブ内の溶湯が冷却されないようにヒーターを追加し、断熱効果があるプランジャーオイルを利用する必要があります。また、厚肉箇所の引け巣を防ぐため、局部加圧ダイカストの構造も導入する必要があります。
*引用自竹久文隆, 深谷紘一, 横井光義, 「鋳物」, 第66巻,(1997), p506 -
NIダイカスト法(New Injectioni die casing process)
NIダイカスト法は、空気圧を使用して溶湯を金型キャビティーに充填したのち、加圧子(Pressure bar)で鋳物に圧力をかけて成形させます。この方法では、専用の射出機構が必要であるほか、ランナー(Runner)やキャビティー(Cavity)内に粉末状離型剤を塗布し、溶湯の充填する時の熱伝導を抑制する必要があります。
*引用自日本鋳造工学会 「誰でも分かる鋳物基礎講座」, (2014), p1
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局部加圧ダイカスト(Local squeeze die casting)
局部加圧ダイカストは、溶湯が金型キャビティーを完全に満たし、凝固が始まった際に金型に設置されている加圧ピン(Pressure pin)で厚肉箇所へ局所的な圧力を加えます。これにより、引け巣が発生しそうな箇所に溶湯が補充され、欠陥が低減できます。加圧ピンによる加圧圧力は、鋳造圧力の約1.5倍ほどです。ただし、加圧のタイミングが悪いと、期待する効果が得られません。
*引用自日本ダイカスト協会「ダイカストって何? DIE CASTING」, (2022), p27 -
無孔性ダイカスト(Pore free die casting)
PF法(Pore free)とも呼ばれます。溶湯を金型に射出する前に、金型を閉じ、プランジャーロッドをスリーブまで進めて待機させます。その後、活性ガスである酸素(O₂)を金型キャビティーに充填させます。充填が完了後、プランジャーロッドを後退させ、溶湯をスリーブに給湯し、高速で溶湯を金型キャビティーに射出して成形させます。高速で溶湯を射出によって霧状になった溶湯はキャビティー内の酸素ガスと反応し、瞬間的な真空環境が作り出され、空気による欠陥を大幅に低減できます。
*引用自日本ダイカスト協会「ダイカストって何? DIE CASTING」, (2022), p27 -
半凝固・半溶湯ダイカスト(Semi-solid metal casting)
金属の液体と固体が共存するシャーベット状態(固液共存状態)を利用し、ダイカストを行う技術です。関連技術には、液体から固液共存状態にする半凝固ダイカスト(Rheocasting)、固体から固液共存状態にする半溶融ダイカスト(Thixocasting)などがあります。
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大型一体成形ダイカスト(Integrated die casting)
従来のダイカスト技術では、小型から中型の構造部品(自動二輪車ハンドル、自動車ドア、エンジン部品など)の生産に複数の金型を必要することに対し、大型一体成形ダイカストは大型で複雑な構造部品(自動車シャーシや自動車用のバッテリーケースなど)を一度に生産することができます。使用するダイカストマシンの型締め力が6,000 tfを超えるため、「ギガキャスト(Giga casting)」とも呼ばれています。
(*引用自Idra Group頻道)
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以上の説明で、ダイカストについて大まかに理解できたのではないかと思います。次章では、ダイカストの基本原理と概念について、より詳しく紹介させていただきます。
それでは、また次回会いましょう。







